イタリアがドイツ人W杯を制するまで、世界最高のリーグはプレミアでもリーガでもなくセリエAだったと思います。
僕らが子どもの頃、憧れのスター選手として挙げる名前は常にセリエAに在籍していて、華々しいプレーでスタジアムを魅了していました。
あの頃の選手たちは近年、次々にピッチを去っています。
去年一昨年だけで、フレイ、ミッコリ、デルピエロ、バルザレッティ、トレゼゲ、リヴァウド、トニ、ディナターレ、ミリート、アッビアーティ。
さらにカカまでもがユニフォームを脱ごうとしています。
カルチョスキャンダル以降、セリエAのパワーバランスは徐々に崩壊し、かつて世界最強だったインテルやミランはEL圏を争う中小クラブへと姿を変えました。
スクデットはシーズン開始からユヴェントスのものとなり、ELこそがイタリアの主戦場になっていきました。
かつて自分たちが憧れたスター選手たちはみんなセリエでプレーしていましたが、今の子どもたちのアイドルは専らリーガやプレミアでプレーしています。
これには様々な問題があると思いますが、その一つに育成の問題が挙げられるでしょう。
現イタリア代表のメンバーを見れば明らかです。
若手選手の中でワールドクラスと呼べるのはインシーニェとヴェッラッティ、ドンナルンマくらいでしょうか。
スペインやドイツなんかとは比べものになりません。
特にストライカーに関して言えば、近年セリエAの選手で怪物だと言われるようなストライカーはそれこそユヴェントスにしかいませんでした。
どこもかしこも得点力不足。
プレミアなんかは下位クラブでも良いストライカーがいたりしますが、セリエAにそれは見込めません。
ただ、この状況は少しずつ変わりつつあります。
第8節を終えた時点でセリエAの得点ランキングはプレミアよりも高いスコアを記録しており、尚且つそれを争う選手の数も近年では考えられないほど増えています。
守備を念頭に置くイタリアの地とはいえ、強いチーム、人気のリーグに良質なストライカーの存在は欠かせません。
ミランが足踏みしている理由もこの得点という部分にあるところが大きいと思います。
ネットを揺らすというのは、自チームを奮い立たせて相手チームを挫くことなので。
これがレベルの低いセリエでの試合だからだと言う人もいるかもしれませんが、欧州の舞台でも今季セリエA勢は決して悪くない戦績をおさめています。
ジェコはチェルシー相手にアウェーで見事な活躍を見せましたし、ユーヴェもイグアインの不調の中、バルサに次ぐ2位につけています。
ナポリは現在3位ですがグループステージ突破の可能性は大いにあるでしょう。
ELの舞台でもミラン、アタランタ、ラツィオは揃ってトップに立っており、特にラツィオは今季インザーギ監督の元で目覚ましい復活を遂げています。
ミランも得点力不足を解消して調子を上げられれば、欧州の舞台はモンテッラが得意とするところなので期待が持てます。
なんせ、ヴィオラでの欧州アウェーの戦績は信じられないほど良かったので。
さらにリーグに目を向けると、これまでシーズン単位の不調だったインテル、ラツィオが復活し、そのインテルとナポリがユーヴェの上につけています。
勿論これはシーズン開幕したばかりの順位でまだまだ何が起こるかは分かりません。
ただ、ピルロとテベスが退団したシーズン頭のユーヴェの絶不調を除き、チームの力でユーヴェの上に立ったクラブはこれまでありませんでした。
今、ユーヴェ1強の時代は終わりを迎えようとしています。
セリエAに競争力が戻ってきたのです。
トップを争えるという意識が高まると、自然とメルカートもトップを争うためのものになります。
さらにここにローマやラツィオも加わります。
ローマは現在5位ですが、ジェコの覚醒やディ・フランチェスコの戦術がハマってきてることを考えると決して不調とは言えません。
さらにローマの強みは怪我以外に大幅な戦力ダウンが予想されないことです。
つまり、選手のクラブ愛が強い。
ナインゴランやストロートマンを見れば明らかです。
先日のチェルシー戦でのジェルソンのウイング起用というサプライズが成功したこと、コラロフが獅子奮迅の活躍を見せていること、期待できる要素は十分にあります。
また、SDはあのモンチです。
ここから上のクラブがポイントを落とせば食われます。
セリエ復活の兆しは何も上位陣だけを見て言ってるわけではありません。
寧ろ中堅クラブにこそ目を向けるべきです。
ブンデスが台頭してきた裏には中堅クラブの功績が大きいのですから。
例えばボルシアMGやシャルケ、レバークーゼン、ヴォルフスブルクは勿論のこと、ケルンやマインツ、ホッフェンハイム、ヘルタベルリンらの好調です。
ではセリエはどうか。
第9節でミランに敗れましたが、アタランタやフィオレンティーナを相手にしながら6戦無敗を記録したキエーヴォと開幕から5戦無敗だったサンプドリアはこのまま好調を維持できればいつも以上の順位でシーズンを終えられるはずです。
さらには、
今季大幅なチーム改革によって不調に苦しむも、数年前はCL圏を争い、ELやカップ戦で好成績を収めたフィオレンティーナ、
現在負傷中ですが、イタリア代表ワールドクラス候補筆頭ベロッティ要するトリノ、
育成システムの成功で近年目覚ましい発展を遂げたアタランタ、
いつも降格圏を争ってる気がしますが、何故か今季は中位を争うボローニャ、
本当はスクデット争いに加わりたいが選手起用が上手くいかないミラン、
こうしたクラブで中位を争っています。
昨年まではある程度結果の予想がつき、だいたい外れずにシーズンが終わりましたが、今季は最終順位の予想がつきません。
これって面白いと思いません?
つまりチームの力が拮抗してきてるわけです。(勿論好不調の関係もあります。)
今、セリエAは変革期を迎えています。
カルチョスキャンダル以降、最もアツいシーズンになるかもしれません。
各チームがアイコンとなる選手を備えて長いシーズンを戦っています。
中位争いをしてるクラブも上位争いに加わる可能性は十分あります。
勿論ヴィオラも上位浮上を虎視眈々と狙ってます。
それぞれのチームが変革期を迎え、プレミアほど華々しくなくも、そのリストに入ろうとするS級名将候補たちがそのチームを率います。
サッリ、スパレッティ、ディ・フランチェスコ、インザーギ、モンテッラ、ピオリ等。
CL優勝を争う監督じゃないかもしれません。
マドリーやチェルシー、ユナイテッドが欲しがる監督じゃないかもしれません。
でもそこに名を連ねる可能性のある監督たちです。
繰り返しますが、今セリエAは変革期を迎えています。
散々煽られながらもイタリアのクラブを応援し続けたことを誇りながら、かつての最高峰とはまた違った形で面白いセリエAとなることを期待しましょう。
Forza Viola.
ご意見・ご感想ございましたらコメントいただけると嬉しいです。
拙い文章読んでくださってありがとうございました。