アルノ川の畔から

セリエA🇮🇹の古豪フィオレンティーナを応援するブログです。ヴィオラ中心に色々書きます。

相棒を修理に出してきた話

相棒のセミブローグのトゥが減ってきたので修理に出してきた。

 

革靴は、靴裏がすり減ってくると修理出来る。

だから手入れをきちんとしていれば、ある程度長く履ける。

しかしまぁ、こんな田舎ではまともな革靴を履いている人なんてごく僅かであり、修理してくれる店の店員は決まって上から物を言ってくる(僕が若いのもあるのだろうが)。

何せそれに腹が立つ。

都会の修理店にクリームやワックスを買いに行った際には、どの店員さんも非常に親切かつ丁寧に分かりやすく教えてくれ、自分の靴も大事にしてくれそうだという印象を受けた。

しかし三重ではそうではない。

だから修理に出す時に気が重くなる。

 

今日もそうだった。

偉そうな態度で接してくる相手に自分の大切な靴を任せたくはない。

とはいっても消耗してしまっているのは事実。

ため息をついてネット検索で近場に見つけた修理店に向かった。

 

分かりづらい細道から駐車場に入って車を駐める。

相棒を片手に店のドアを開けようとすると、さて、どうしたことかドアが開かない。

よく見ると、営業中の立て札があるのに「しばらく出ています。電話いただければ、戻ったら連絡します」と書かれた紙が入り口に貼ってある。

なんだよと思い、仕方なく次の用事を先に済ませに出かける。

 

2つ程仕事の用事を済ませた後、またあの営業中なのに開いてない店に戻る。

今度は、ちゃんと電気が点いていることを確認。

不安交じりに店に入る。

 

奥から出てきたのは強面のおっちゃんである。

声も低くて渋く、なかなか迫力がある。

トゥがすり減ってきた旨を伝えると、ハーフラバーを勧められる。

別にハーフラバーに嫌悪感はない為、それを依頼。

頼んでもないのだけれど、何故か安くしてくれるという。

礼を言って、金を払う。

 

さて、靴の引き取りなのだけれども、これは平日受け取りに行くことは仕事の都合でまず難しく、来週の土曜は終日予定が入っていて、日曜は店の定休日。

2週間は取りに来れないなぁ、などと考えていた。

するとおっちゃんが、

「そやなぁ、早く欲しいやろからなぁ。月曜日には...う〜ん、いや、明日言うてくれたらお兄さんのええ時間に店開けるわ。」

と言う。

明日は日曜日。

定休日である。

ハーフラバーを値引きし、その上定休日に店を開けて靴を僕の手に戻してくれるのだと言う。

正直驚いた。

店員の態度も、待遇も、マウントだけとってくるこれまでの店とは違った。

 

聞けば、店主は元々名古屋で何店舗か店を出していたらしく、10年程前にそれを従業員に譲って田舎にやって来たのだそうだ。

なるほど説明も簡潔で分かりやすかった。

世間話を少しして、店を出た。

 

 

昨今、接客業の過剰なサービス心から客がつけあがって、店員に対して横柄な態度をとる客が増えてきた。

そういう背景があって、今度は客を神様扱いしないという店も増えてきた。

僕はそれで良いと思う。

僕がアルバイトで接客業をしていた時にも、客を神様だと思ったことは微塵もない。

クレーマーはカス、それ以外は客。

それ以上でも以下でもなかった。

だから僕は今でも客であるときは最高の客であるようにしている。

するとおおよそ店員も最高の店員になる。

今日依頼した店以外の、三重の靴の修理屋を除いて。

 

僕は多分また今日の店で修理を頼むだろうと思う。

強面の店主は、僕を神様扱いしない。

でも、僕をきちんと客として扱う。

そしておそらく、靴好きの仲間として見てくれる。

変にマウントをとってくるような店員とは違う。

 

知識をひけらかすことは別に悪いことだとは思わない。

が、趣味の世界の知識に優劣などない。

別に僕に趣味に関する知識があるわけではないのだけれど、僕も店主のような趣味の楽しみ方をしようと思った。