アルノ川の畔から

セリエA🇮🇹の古豪フィオレンティーナを応援するブログです。ヴィオラ中心に色々書きます。

ドゥシャン・ヴラホビッチ

FWは点が取れなきゃ意味がない。

どれだけ組み立てに貢献しようが、どれだけ良い飛び出しが出来ようが、ネットを揺らせないFWは不要だ。

そういう意味で、自信を無くしたストライカーほどチームにとって不利益なものはない。

 

僕はシメオネの放出が誤りであったとは思いません。

実力不足だとかそういう話ではなく、単純に環境を変える必要があったと思うからです。

カリアリでの躍動は、彼の環境の変化というのも起因していると思います。

ゴールおめでとう。

喜ばず、頭を抱え、天にキスをするリスペクトに感謝します。

 

迷う中で編み出したキエーザ&リベリーの2トップは序盤こそうまくいったものの、現在のところなかなか成功しているとは言えません。

結局最後まで点が取れずにドローに終わってしまったり、点が取れぬままズルズル引っ張ってやられてしまったり。

 

僕は常々、上に行くにはシーズン15得点以上出来るストライカーが必要だと言ってきました。

直近でこれを達成していた選手はニコラ・カリニッチです。

今でこそネタにされたり嫌われていたりしますが、ヴィオラ加入当初は彼のお陰で一瞬ながらリーグトップに立ったのです。

「コイツならなんとかしてくれる」

「コイツなら一点決めてくれる」

そういう選手が必要なんです。

 

そして、プリマヴェーラにおけるドゥシャン・ヴラホビッチはまさにそういう選手でした。

どれだけ逆境にあるゲームでも、ワンチャンスでネットを揺らしてしまう。

「コイツなら」と思わせてくれる選手でした。

 

プリマ・カップ準決勝、インテルとのホーム戦で先制されながらも最後87分に逆転の決勝点を突き刺したのはヴラホビッチです。

同じく決勝のトリノとの一戦で内容的には圧倒されながも2戦合計で3点奪ってみせたのもヴラホビッチです。

いつだって味方は彼を探しました。

それを観ている僕らも彼を信頼しました。

 

だからこそ期待しました。

トップチームで下部出身のストライカーが大暴れすることを。

そしてそのエースとタッグを組む、同じく下部出身の天才肌のゲームメイカーを。

 

「ヴラホビッチはトップにはまだ早い。」

「一度レンタルに出して経験を積むべきだ。」

 

分かります。

分かりますが、僕はそうは思いません。

ヴラホビッチは実力でトップ残留を勝ち取っています。

僕はプレシーズンから彼の動きを見ています。

必ず彼はやれる。

 

とはいえ、いきなりトップチームで大活躍というのは難しいかもしれません。

プリマとは強さも速さも上手さも違います。

ただ、それらに彼が慣れて、彼らしい、ストライカーらしいエゴイスティックさが現れ始めた時、それはドゥシャン・ヴラホビッチという名のFWが開花した時ではないかと思うのです。

 

だからこそ、ヴラホビッチには最初の一点が必要でした。

リーグでも俺はやれるという、自力で撃ち抜いた一点が。

今日、それがあったじゃないですか。

 

ダウベルトから中央で受けたボールを2タッチで素早く流し込んで決めた連携のファーストゴール。

そしてサイドから軽く内にズラしてコースを撃ち抜いた個人のセカンドゴール。

どちらも彼が彼自身の実力で決めた見事なゴールです。

 

もしかすると、セカンドゴールの方は、1点目がなければ撃ってなかったかもしれません。

これまでのプレーを観ていると、中の味方に預けようとしたかもしれないなと思います。

あそこでゴールだけを視野に捉えていたのがなんとも頼もしいじゃないですか。

 

その後もドリブルで突破を図るような姿までありました。

これまで見られなかった、積極的なプレーです。

おそらくこの90分、絶望の淵にやられた長い長い時間の中で、ヴラホビッチは何か得た。

明るい場所で見えなかったものが、闇の手探りの状態になって初めて手に触れた。

 

ボアテングの獲得により、ベテランで実績のあるスターがファースト・チョイスになりました。

ペドロ獲得により、ブラジルのホープとポジション争いを強いられるようになりました。

ボビー・ダンカンの獲得により、居心地が良かったはずのプリマにも戻ることは出来なくなりました。

加えてキエーザリベリーという、自分と全く違うプレースタイルの2人が最前線で起用されるシステムが使われ始めました。

まだ19歳の彼にとって、これほどの逆境が、プレッシャーがあるでしょうか。

 

みんなが自分を頼ってくれた環境から抜け出した今、おそらく彼は頼る側になっていたはずです。

それがもしかしたら今日少し変わったかもしれない。

それは何よりの収穫ではないでしょうか。

 

守備は大ザルで中盤も銅像かよというくらい動けない。

為す術ないまま5失点。

そんな中にでもポジティブなことはあると思います。

 

次節、プルガルとカストロヴィッリがサスペンションで出場不可です。

この時点でかなり絶望的です。

が、諦めるのは試合終了の笛が鳴ってからです。

 

僕らには、まだ目を覚ましたばかりのストライカーがいます。

そして途中出場から何度もカリアリのゴール枠内に鋭く低いシュートを放った下部出身のウインガーがいます。

遂にイタリア代表のレギュラーにまで上り詰めてしまった市場で7000万ユーロ以上の値がつくエースがいます。

 

願わくば、彼らにラストパスを送る天才型MFトフォル ・モンティエルがそこに居て欲しい。

 

失った勝ち点3はまた取り返せばいい。

降格争いから再起の19-20シーズンは、2桁順位じゃ終われません。

 

批判の声を黙らせろ。

「まだ早い」なんて言わせるな。

敵陣最後方に叩き込め。

君には、その力があるじゃないか。

 

ご意見・ご感想ございましたらコメントいただけると嬉しいです。  

拙い文章読んでくださってありがとうございました。