フィオレンティーナの監督には皆決まって紫のよく似合う人が就きます。
昨季ヴィオラにやってきたピオリもそうでした。
紫のベストを着こなす姿はなんともイタリア人らしく、洒落たおじ様という雰囲気に、僕はまるで昔からずっといたかのような安心感を覚えました。
迎えた1シーズン目は苦難の連続。
コルヴィーノが集めてきた期待の若手も、若さが裏目に出て簡単なミスで失点し、そのまま勢いを取り戻せずに勝ち点を落とします。
それでもピオリは若い選手を信じて起用し続けました。
最初に芽が出たのはMFジョルダン・ヴェレトゥ。
攻守に走るダイナモがチームに推進力を与えます。
アストン・ヴィラで伸び悩んでいた若きフランス人は気付けばチームの心臓と呼べるまでに成長しました。
それに続いたのがマルコ・ベナッシ。
シーズン当初は試合から消えてしまう時間が多く、起用を疑う声も少なくありませんでした。
しかし今、彼がいるのといないのとでは攻撃の完成度がまるで違います。
僕はピオリ政権で生まれたゴールの中でベナッシのゴールが一番好きだったりします。
今季のウディネ戦でDFラインの裏に抜け出してキエーザからのループパスをダイレクトでニアに叩き込んだ一点です。
ベナッシは現在もチーム内得点王。
誰がチームへの貢献を疑うことができるでしょうか。
中盤2人に続いた才能がLSBクリスティアーノ・ビラーギです。
軽い守備にテキトーなクロスでお馴染みだった彼はアッズーリの常連となり、左サイドからのヴィオラの攻撃を支える武器となりました。
今季に入ると守備の安定感も増し、それに伴って彼に興味を抱くクラブも増え続けています。
そのビラーギのクロスを信じて飛び込み続けたジョバンニ・シメオネ。
今季は決定力不足に悩み、出場機会を得られずにいますね。
でも、昨季後半のチームを支えたのは間違いなくシメオネでした。
僕は今季のピオリの不調にはシメオネの不調が大きく関わっていると思います。
アウェーのローマ戦で見せた1人カウンターを僕は忘れてません。
また、今や数千万ユーロの値がつく世界的な才能を開花させたのもピオリでした。
セルビアの盾、ニコラ・ミレンコビッチです。
SBで起用され続けた結果、CBとしての安定感を欠いたように思えなくもないですが、プレーの幅が広がったことは間違いありません。
まだまだビッグクラブのCBを担えるレベルにはないかもしれませんが、いずれそうなったとしても誰も驚きはしないでしょう。
ピオリの残した結果は芳しいものではなかったかもしれません。
しかし、彼の育てた才能はきっと次なるチームへと繋がってくれるはずです。
何より、ダヴィデ・アストーリの死後、チームをまとめて勝利を続けたのはピオリでなければ出来なかったと思います。
選手との絆はキエーザとの抱擁を見れば分かります。
その腕に刻まれたアストーリの喪章は決してただのパフォーマンスではなかった。
チームの結果に否定的な声が多く上がり、最後には自ら退く道を選びました。
僕も彼の辞任には賛成です。
でも、それに差し当たってリスペクトの意を表したいと思います。
そしてそれと同時に、彼のためにもフィオレンティーナは失い続けた勝利を取り返さねばなりません。
さらばミステル、ステファノ・ピオリ。
これからの彼のキャリアに最大限の成功があることをお祈り致します。
ご意見・ご感想ございましたらコメントいただけると嬉しいです。
拙い文章読んでくださってありがとうございました。