テレビゲームでモデル化されたもの程、現実のメルカートは容易ではありません。
市場で勝てるのは市場を知る者のみであって、僕らのような素人はそれこそモデル化された世界で理想を夢見ることが良いところです。
メディアは時として虚構を事実であるかのように報じ、それに一喜一憂する僕らを見て笑います。
A社の嘘に遅れを取らぬよう、B社も嘘を送り出すのです。
そうして完成した世界こそ僕らがメルカートと呼んで親しむ蜃気楼です。
そんな世界で唯一事実のみを知り得たとすれば、それを王と呼べはしないでしょうか。
フィオレンティーナという国にもそんな王がいます。
彼の名はコルヴィーノ。
主に無名の若手選手の発掘に長け、プランデッリ期の紫に栄光を与えた男。
最も理解に易い名を挙げるならば、マヌエル・パスクアルやダニエル・オスヴァルドらでしょうか。
ゲームの中でチームの王となるのは監督ですが、移籍期間に全てを担うのはコルヴィーノです。
ニュースペーパーの記事の真偽を唯一知るのがSDやGMです。
彼らの仕事はある種監督や選手よりも重要となり得ます。
夏のメルカートにおいて、フィオレンティーナは大いなる成功を手にしました。
いえ、正確には、「手にしたように見えました」と言うべきでしょうか。
ケヴィン・ミララスやマルコ・ピアツァ、ジェルソンという世界的にも名の知れた選手陣の獲得はフィオレンティーナにとって珍しく、恥ずかしながら浮かれていたのかも知れません。
冷静になるべきでした。
コルヴィーノが得意とするのは「主に無名の若手選手の発掘」です。
アストン・ヴィラから獲得したヴェレトゥやパルチザンから獲得したミレンコビッチの事を一体誰が知っていたというのでしょうか。
では、先日獲得が発表されたルイス・ムリエルは果たしてどちらに分類されるのでしょう。
勿論名の知れた選手が悪いと言うのではありません。
名の知れるということは相応の過去があるということですから。
とりわけ冬のメルカートでは即戦力が求められます。
チームにフィットするのを待っている余裕はないということです。
わかりやすい失敗をしたのがファルチネッリでしょう。
みすみす戦力であったババカルを手放して結局最後までフィットしなかったファルチネッリを獲得したのは間違いでしかなかった。
ムリエルはセリエ経験あるFWで、サンプ時代の活躍は個人的にも記憶に残っています。
一方でセビージャの舞台では躍動できぬままヴィオラのユニフォームを着ることとなりました。
今の彼がどちらに転ぶかは実際に見てみないと分かりません。
そもそも中盤が改善されなければFWを代えても無駄だと思うので。
ただ、不調に喘ぐシメオネやまるで戦力外のピアツァの代わりが必要であったことは間違いありませんので、そういう意味では的確な補強だと言えます。
フェイクニュースへの一喜一憂にはもう懲りました。
ミレンコビッチ?キエーザ?ヴェレトゥ?
どれでも好きなものを持っていくと良いと思います。
代わりにカンセロとインシーニェとブロゾビッチを下さい。
あとバレッラとイッツォとカプートとフロイラー。
絵に描いた餅は食べられませんが、味を想像するくらいは出来ます。
そうして食べてもない餅について美味いだの味付けが違うだのと言っていても虚しいだけです。
冬のメルカートでおそらくそれほど大きな変動はないでしょう。
それでも僕らは今日も餅の絵を描きながら王からの御触れを待つのです。
時は満ちた。
賽は投げられた。
餅の絵はもう描き飽きた。
ルイス・ムリエルを反撃の狼煙にしましょう。
このメルカートの補強費は0だったはずなので、獲得があったということは放出があるということです。
でも、僕は選手を信じるようにフィオレンティーナの王を信じようと思います。
手のひら返しは世論の常であることをお忘れなく。
ご意見・ご感想ございましたらコメントいただけると嬉しいです。
拙い文章読んでくださってありがとうございました。