アルノ川の畔から

セリエA🇮🇹の古豪フィオレンティーナを応援するブログです。ヴィオラ中心に色々書きます。

マエストロの帰還

紫のユニフォームを着たルイ・コスタを知らない僕にとって、彼は史上最も美しいフィオレンティーナのMFである。

この移籍は戦力的な補強であると同時に、彼のキャリアに有終の美を飾る街の選択でもある。

かつて彼はフィレンツェで引退したいと語った。

誰より街を愛し、街に愛された男。

ボルハ・バレロフィレンツェに到着した。

 

広い視野と高いインテリジェンスで最適な選択肢を導き出し、それを柔らかなボールタッチで実現する。

フィオレンティーナの美しいポゼッションサッカーの脳であり、心臓であり、魂であったスペイン仕込みのマエストロの帰還を歓迎しない者はない。

 

戦力補強としてみれば、賛否あるのは致し方ない。

年齢はキャリアのピークを過ぎた35歳。

フルで使えるかといえば難しいだろう。

噂にあがっていたトレイラやリッチのような選手なら売却で利益を得られるかもしれないが、そんな期待は出来そうにない。

あの頃の素晴らしいプレーから衰えた姿を見たくないというファンの気持ちも理解できる。

 

それでも僕はバレロフィオレンティーナをキャリア最後のクラブに選んだことを心から嬉しく思うし、この瞬間をずっと待っていたと言える。

フィオレンティーナは僕にとって浪漫である。

屋根のない美術館と称されるフィレンツェに彼のような美しきゲームメイカーは相応しい。

何より、あのボルハ・バレロとガエターノ・カストロヴィッリが肩を並べる姿を見たくないわけがない。

インテルでブロゾビッチが開花したのはバレロのお陰であるという話も聞いたことがある(信憑性は定かではない)が、カストロヴィッリやアムラバトがバレロから学べるものは沢山あるたろう。

何よりカストロヴィッリがゲームメイカーとしてもう一皮剥けるには、バレロが必要だと思う。

推進力は既にバレロを凌駕する域にあると思うが、パサーとしての腕はベテランのバレロが依然として上をいく。

学んで成長して欲しい。

 

これにより、ヴィオラの中盤は一気に潤った。

カストロヴィッリ、プルガル、ダンカン、アムラバト、ボナベントゥーラ、バレロ

新加入メンバーのアムラバト、ボナベントゥーラ、バレロは全て中盤に必要な守備と組み立ての能力を一定水準以上で備えた即戦力だ。

昨季の、全く中盤で組み立てが出来ずにリベリーが降りてきてDFからボールを受け、ドリブルで持っていくような展開はある程度避けられるだろう。

 

問題は開幕戦である。

中盤底で起用できるアムラバトとプルガルが出場不可。

バレロも合流後間もないため、先発起用はギャンブルだろう。

すると、中盤構成はカストロヴィッリ、ダンカン、ボナベントゥーラが濃厚だ。

それぞれ個別には悪くないが、組み合わせたときにゲームメイクの核になれる選手がいない。

 

一方、それは対戦相手のトリノも同様である。

ジャンパオロを新たな監督に迎え、元SPALのヴァニャーティをSDに据えることで、メルカート開幕から手早く動いてきたが、サンプドリアで言うところのプラートは今のトリノにはいない。

 

昨季の問題点であったWBにはムッルとリカルド・ロドリゲスという即戦力を加え、フィジカル勝負だった中盤に欠点らしい欠点のないバランス型のMFリネッティを獲得。

CBは移籍の噂が絶えなかったイッツォとエンクルがまだ残留しており、ヴィオラ行きの噂も出ていたベロッティもチームに残っている。

さらにジャンパオロの愛弟子トレイラまで獲得の噂が出ているので、メルカートの動きとしてはかなり良いが、前線へのコンダクターがまだ不足しているように感じなくはない。

互いに決め手にかける中盤構成であると言えよう。

 

前線はタレントの枚数だけで言えばヴィオラに分があるが、フィオレンティーナにベロッティのような絶対的なストライカーはいない。

ジャンパオロイズムが浸透しきってない序盤に戦えるのは幸運だが、結果は全く読めないというのが本音である。

どちらも昨季は思い通りのシーズンに出来なかった中堅クラブであり、今季の巻き返しを狙っているのは事実。

ここから育てようという若手より即戦力を選んで集めてきた。

バレロやボナベントゥーラもその一人である。

バレロの引退を不甲斐ない結果で迎えたくはない。

エストロの最後は美しく飾りたい。

まずは今夜、アルテミオ・フランキに勝ち点3を掲げて暫定首位で新シーズンの開幕としようじゃないか。

 

ご意見・ご感想ございましたらコメントいただけると嬉しいです。  

拙い文章読んでくださってありがとうございました。